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路地裏の楽しみ方「焼菓子店 kiramade」「ハンドメイドkirameki」

一人ひとりの人生がきらめいてほしいと命名されたという「ジョブきらめき」が運営する焼き菓子店”kiramade”(キラメイド)は2024年2月に始まった。

カウンターには一番人気のシュークリームをはじめ、シフォンケーキ、パウンドケーキ、フィナンシェ、クッキーやタルトなど、数種類の焼き菓子が並んでいる。一つずつ丁寧に個包装された焼き菓子はお持たせにもぴったり。

愛らしい表情とスパイシーな香りが癖になるジンジャークッキー
プレゼントにもぴったりな型抜きクッキー
予算に合わせてセット購入も可能

精製されていないきび糖、平飼いでのびのびと育った鶏の卵、沖縄の食材にこだわるお菓子作りを牽引する名嘉山さんはニコニコとした笑顔が印象的な方だった。
読谷村にあるパティスリーで従事していたという名嘉山さんは知り合いの紹介で訪れたジョブきらめきの施設に通う方々のパワーに圧倒され、ここで働きたいと志願した。
伺った際、利用者の方々は笑顔で迎え入れてくれ、一人ひとりが挨拶をしてくれ、色々と話しかけてくれた。

路地裏の隠れ家焼き菓子店 kiramade(キラメイド)

こちらのお店を知ったきっかけは、嘉手納郵便局に納品された焼き菓子をたまたま手に取った叔母からの情報だった。近くに新しいお菓子屋さんができたらしいんだけど、探せなくて…と。シュークリームに目がない叔母は、郵便局でもらった地図を頼りにお店を探したが見つからず、いつか買ってきてほしいと懇願されていた。
元々教会があったその場所は嘉手納町の端の方に位置し、住民でないとなかなか通らないような場所にある。隠れ家的なお菓子屋さん。
2階は事務所として使用し、広く取られたキッチンは、各事業所のお昼ごはんを作るセントラルキッチンとしての側面も担う。
お弁当ではなく、お皿に盛り付けて食べることを大切にしたいという会社の取り組み。

施設を運営されている会長の渡慶次さんも同席頂けたので、ジョブきらめきの生い立ちや歴史も伺うことができた。
高齢者デイサービス、児童デイサービスは嘉手納町からはじまった。福祉のニーズに合わせて事業を展開し、10年ほど前に就労継続支援B型の施設を開設。水釜にあるジョブきらめきではフラワーソープアレンジからはじまり、今では島ぞうりアートやレザークラフトなど、様々な商品を制作、販売を行っている。

「福祉への支援だから」ではなく、「いいものだから」と商品を手に取ってくれる人が増えてほしいとそれぞれの道のプロが指導員として技術指導を行う。
ある程度の技術を習得すると利用者と指導員としてではなく同じスタッフとして一緒に作業をするところがきらめきのいいところだと話してくれた。

島ぞうりアート。世界に一足のオリジナルが作れる。
レザー小物も充実。

路地裏のクラフトショップ ハンドメイドkirameki(キラメキ)

水釜の作業施設、売り場も見学させてもらいながら、所長の大城さんにもお話を伺う。嘉手納出身の大城さんは、この商品がいろんな人の目に止まり、そこから嘉手納町が盛り上がることに貢献できたらと話してくれた。
それぞれが自分の作業に取り組み、楽しそうな雰囲気であることがとても印象的だった。

ミシンの前でレザーのキーカバーを作っている方が話しかけてくれた。
最初はミシンを思い通りに動かせなくて苦戦したけど、今ではとっても早く作れると自慢げ。その笑顔が本当に素敵だった。

ミシンでキーカバーを作っているところ。
様々なデザインにあふれる目移りしてしまう売り場の様子
アクセサリーも多数。

分業で一つのものを作る楽しさ。妥協のないモノ作り。

kiramade焼き菓子店では、作業を分業化して一つの商品を作るのにたくさんのスタッフが関われることがとてもいいと名嘉山さん。

kiramadeの朝は生地の仕込みから始まる。利用者さんがやってくると成形や型抜きなどを行い、焼き上がったお菓子を個包装にしたり、シールを貼ったりと出来るレベルに合わせて分担して作業を行う。
伝え方を考えないといけないことがあったり、うまく伝わらなかったり…そこが大変だけど、昨日できなかったことが出来たり、スピードアップしてきたり、日々の成長を一緒に楽しめる、パワーのある利用者のみなさんと働けることが本当に楽しいと話してくれた。

カメラを向けると満面の笑顔。
レジや袋詰めも分担して行っている。

働く中で、できることを増やし、自信をつけて社会の一員であることに誇りを持つ。

会長の渡慶次さんの話の中に、学校を卒業後、引きこもりになる方が多いというというものがあった。誰しも、学校を卒業したあとの進路は全部自分で決めていかないといけなくて、自分を活かせる場所を見つけるのは誰でも本当に大変なこと。

今回、お話を伺うことが決まり、「就労支援B型」という言葉を初めて検索した私には、知識が乏しく「社会福祉」に関わるというハードルはとても高いように思えていたし、どのように出会うのかもわからなかった。

実際、取材に行くのもとても緊張した。言葉選びに失礼のないように…ということばかり考えていた。

渡慶次さんの話の中で一番印象に残ったのは、「社会福祉」という括りで距離を感じてしまうのではなく、日常の一部になることが望ましいということ。


「社会福祉」への支援として購入するお菓子や製品ではなく、美味しいもの、丁寧に作られたものとして手に取ったものが社会福祉と関わっているものだった。
社会福祉を知ること、理解することは大事かもしれないが、”美味しいから買う”、”かわいいから買う”ということに「福祉」を全面に出す必要もない。そういう時代なのだと感じた。

kiramadeの焼き菓子は郵便局だけではなく、嘉手納町役場への出張販売や読谷村役場内にあるカフェ「からはーい」に卸したりしている。
そこでkiramadeの商品を知った方からの問い合わせで、学園祭やチャリティーイベント、企業のイベントで使用したいと定期的に大量注文が入るという。
名嘉山さんの職人としての技術や知識があってこそだと話してくれた渡慶次さんの言葉がお客様からの注文実績として積み重なり、お店としての価値になる。
素材に拘り、丁寧に作られた焼き菓子はたくさんの人たちの胃袋を掴み、心を掴み、利用者さんたちの自信に繋がっていく。

たくさんの人が関われば関わるだけ大変なことも増えるけど、嬉しさは倍増する。

一番の人気のきび糖クッキーシュー
人と人がリボンで繋がっていくようにと願いを込めて作られたロゴ

そんな温度感のあるお菓子屋さん「焼き菓子kiramade」は”きらめき”と作るを意味する”made”を組み合わせて命名された。

ロゴの「K」はリボンをモチーフにし、人と人がリボンで繋がっていくようにと願いを込めて作られた。
もらった人が、調べてお店に買いに来てくれたり、イベントに使いたいからと大量注文が入ったり、開店から1年も経たずに広がる繋がりがあることが本当にすごい。

現在の店舗はお持ち帰りのみ。将来的にはカフェを併設し、子どもから高齢者までたくさんの人が集まるコミュニティにしていきたいと話してくれた。地域に密着し、地域に貢献する。
事業所の勤務形態上、土日が定休日で営業時間も15時まで。

素材にこだわり、一つ一つ丁寧に作られた焼き菓子を嘉手納から県内全域の方々へ、地元の食材を使って作られた焼き菓子はお土産として嘉手納から全国へ。

kiramadeの挑戦は始まったばかりだ。