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「珈琲喫茶カメシマ」に流れるレトロという時間

58号線から北向けに嘉手納の商店街へと向かう通りを曲がると大きく「COFFEE」の文字が目に入る。間口が広く、ウェルカムな空気感。

2020年2月4日。珈琲喫茶カメシマはスタートした。

「カメシマって名前、沖縄でも多くないし、親戚とかもこの辺に多いからカメシマって聞くと嘉手納って思ってくれるから」と店名に掲げる。

「珈琲喫茶もシンプルでわかりやすいし、”カフェ”にしちゃうと入りにくいって人が増えてしまうし、立地的におじーおばーも多い」。

10代から70代まで幅広い年齢層のお客様に愛される町の喫茶店。

価格設定も通いやすさを重視している。

子どもの頃からご近所さんで、この場所を知っていた。

昔から知っていた建物を活かすための”知識”と”技術”という素材集め。

嘉手納町の新町通りにある「LUKE TACOS」のオーナー、村吉さんは友人で、いつかは自分の店を…と独立の話をよくしていた。

「彼が嘉手納で店を構えて、自分もやるなら地元でと決めていたし、そろそろかなと考えていたタイミングで今の物件を見つけて。ここの場所、この見た目なら喫茶店かなーと。それで喫茶店にしました。」

え!?この内装、この作り込まれたメニュー…

そんなあと付け的な理由で喫茶店なの??と驚く。

喫茶店と聞くと、きっとどこのお店でもその三択で迷うよねーと思う、ランチタイムに提供されているビーフカレー、チキンオムライス、ナポリタン。

オープン後すぐ、新型コロナウイルスの蔓延によって営業自粛を余儀なくされ、テイクアウト出来るものを…と始めた。

「元々料理人じゃないし、出来るものを…というのと、ベタな”喫茶店メニュー”として始めてそのまま定着しただけ」と笑う。

みんなが思い描く「喫茶店」の雰囲気。めちゃくちゃ作り込まれてるのにひょうひょうと成り行き的にこうなったと話すオーナーの亀島さん。

店舗を見て、喫茶店だ!ならコーヒーだ!!と独学で勉強を始める。

前職は同じ嘉手納町にも店舗のある沖縄の人気店ゴーディーズでハンバーガーを作っていたそうで「ハンバーガーしか作れない。パンは焼けたけど、それ以外のことは全部自分で勉強して作り上げていった」と話してくれた。

デザートはお母様やお姉様がやるよと作り始めてくれて、人気でテイクアウト需要も多い。

お客様の日常に溶け込む時間。「喫茶店に来ている」という特別な日常。

お客様層は地元の嘉手納町、読谷村の方がほとんどだそう。

よく雑誌やSNSで紹介されているのを見る気がしてますが…

「沖縄の情報誌しか取材を受けてないし、観光客というよりは地元に馴染みたい」と芯が強い。

伺った日も「お久しぶりでーす」って入店される方、「昨日さ…」といつものように世間話を始める方…日常に”珈琲喫茶カメシマ”がある人たちで溢れていた。

ルーティン的にやってることを尋ねると「ほぼ仕事。何かをする時間を作りたい」「最近は忙しすぎて起きれない、もっと寝たいって思う日が多い」と笑って話してくれた。

お店を定着させることを第一に考えて日々を重ねる。

「提供したコーヒーや食事を美味しいって食べてくれる人の顔を見るのがやりがいだなと思う。」

初めて来てくれた人が美味しいから、居心地良かったからと、通ってくれるようになったり、友達にお店を紹介してくれて、また、はじめましての人が来てくれて…その繰り返しがお店の定着に繋がり、何にも変えられない価値になる。

アナログがお店の魅力に。目に映る全てに温度を感じられる喫茶店。

メニューや看板もすべて手書きのレトロ調。店内の装飾とすごくマッチしていて、どこを切り取っても同じ空気感を纏う珈琲喫茶カメシマ。

「自分の好きなものを集めてお店を作っただけだし、コピー以外デジタルなこと出来なかっただけ」「こだわりもないし、普通の上等を目指してる」と亀島さん。

腰の低さにこっちが恐縮する。

レジカウンターの後ろの壁には、もう貼るとこないよーってほどにコーヒーチケットが貼られている。一番上にはキープしてる方のお名前。みんな持って帰らないんだと思ってみていると、「カードタイプもありますよ。」と教えてくれた。

古き良き時代。昔ながらのシステムらしく、マイチケットをお店に留守番させたり、カードを出して珈琲を嗜むのがきっとひとつのステイタスのようなもの。

お客様たちの「いつも」がここにあることがその壁を見ただけでわかる。

置きチケットもお店の雰囲気を作る。

常連さん達が作る空気感もありながら、はじめましてでも優しく受け入れてくれる温かい空気感が珈琲喫茶カメシマの魅力。

「個性的な飲食店が少しずつ増えてきて、歩いて楽しめる嘉手納が出来つつある。飲食店だけだとたくさんは回れないので雑貨屋さんとか色々なバリエーションのお店が増えるといいな。」と嘉手納町への展望を話す。「嘉手納はいろいろ程よくて。田舎すぎず都会すぎず。」どこにでも出やすいということはどこからでも来やすいということ。

昔から、この場所にあったこの建物。その外観をそのままに、「ここだったら喫茶店」と喫茶店を始めたという経緯もそのセンスも本当にすごい。

住民の頭の中にある嘉手納町の地図を変えることなく、お店を作り、喫茶店を始めた。

嘉手納町の人こそ「昔からあるよね?」「え?まだ5年目なの?」と言っちゃう珈琲喫茶カメシマ。

いつも通っていた場所だから。いつも見ていた場所だから。

亀島さんにしか作れなかった喫茶店がここにある。

そしてこれからもここで。珈琲喫茶カメシマは地域に愛され続ける。

珈琲喫茶カメシマ」詳しい詳細は↓こちらから

ライター : 古市萌